はじめに
先日のAmazonブラックフライデーで通常価格で約6万円のものが¥39,800まで下がっていると書いていたSAMYANGの単焦点レンズ『Remaster Slim』を思い切って買ってみました。
財布的には完全にオーバーキル状態なんですが、価格がまた元に戻ったら割高に感じちゃうんだろうなと思ったら、頑張って買っておくべきかなぁって思ったんですよね・・・
最近はどうなのか分かりませんが、SAMYANGのレンズって生産完了とかになってくるととんでもない投げ売りで出たりしてるイメージがあるので、今回の価格を下回る可能性もあるんですが、早めに買って使いまくってれば下がっても問題ないかなぁ・・・と。
SAMYANG Remaster Slimとは
SAMYANG Remaster Slimはレンズ鏡筒はそのままで、工学系のユニット部分を交換する事でレンズの大きさを変えずに異なる焦点距離、描写のレンズへと変える事が出来るオートフォーカス対応のフルサイズEマウントレンズとなっています。
光学ユニットはレンズフードのようなバヨネットマウントの磁石固定式となっていて、1980年代~2000年にかけて登場したコンパクトフィルムカメラの光学系の特性を維持しつつ、デジタルに最適かするというリマスタリングを行った3種類の焦点距離(21mm F3.5、28mm F3.5、32mm F2.8)の光学ユニットがセットになっています。
名称からも分かるように、コンパクトフィルムカメラのレンズをインスパイアしているので、パキパキに写る3種類のレンズが交換できるという感じではありません。
なので、実際には人を選ぶタイプのレンズではあると思うんですが、最大径63mmx長さ19.5mmという非常にコンパクトなサイズなのにフルサイズ対応という事なので、ちょっとレトロな感じの写りも好きな方だったら結構いいレンズなんじゃないかなと思います。
スペック
Remaster Slimのスペックは以下の通りなんですが、通常と違うのは工学系のユニット部分と鏡筒とで分かれる形の表になります。
●本体ユニット(マウントモジュール部分)
| 最大径 | 63mm |
| 長さ | 19.5mm |
| 重さ | 58.1g(本体ユニットのみ) |
| AF駆動 | STM |
| フィルターサイズ | 49mm(レンズユニット交換時には取り外す必要あり) |
| その他 | AF/MF切り替えスイッチあり |
●レンズユニット
| RS 21mm F3.5 | RS 28mm F3.5 | RS 32mm F2.8 | |
| レンズ構成 | 6群7枚 | 6群6枚 | 6群6枚 |
| 絞り | F3.5~F22 | F3.5~F22 | F2.8~F22 |
| 最短撮影距離 | AF:0.18m MF:0.15m | AF:0.3m MF:0.23m | AF:0.37m MF:0.28m |
| 重さ | 12.6g | 12.5g | 8.4g |
| 絞り羽根 | 7枚 | 7枚 | 7枚 |
| コーティング | UMC | UMC | UMC |
という事で、一番重い21mm F3.5を装着した状態でもレンズの重さは70gくらいなので、α7CIIやα7CRに付けた場合だと約600g以下という軽さになります。
また、レンズユニットは前面から交換する方式なんですが、前面には49mmのレンズフィルターを装着することが可能なので、レンズの雰囲気以外にもフィルターの特殊効果を合わせた撮影が可能になります。
但し、レンズ交換時にはフィルターを一度取り外す必要があるので注意は必要ですが・・・。
Remaster Slimの開封
ボックスはレンズらしからぬ感じのちょっと平べったいボックスで届いたのでちょっと予想外でした。

箱を開けると持ち運び用のハードケースと取説が入っているだけのシンプルな感じでした。

このケースに本体とレンズユニットを入れて持ち運ぶ事ができます。
セット内容
専用のハードケースを開けるとRemaster Slim本体とレンズユニット3種(1つは本体にセット)が出てきます。

レンズユニットを別に持ち歩く事を考えたら、このケースに入れて持ち歩く方が安全でしょうね。
とはいえ、交換用のレンズユニットを入れているプラケースは専用ケースから着脱できるので、Remaster Slim1本だけで持ち出すのであれば、このユニットケースだけを持っていくのも全然ありですね。

結構小さいので上着のポケットに入れていけば荷物にもならない感じです。
それぞれのレンズと本体のキャップを外した状態がこちら。

レンズユニットに49mmの表記があるように、本体ユニットには49mmのフィルターをつけられます。
レンズユニットはこんな感じで着脱できます。

レンズユニットの切り欠き部分と本体の白いラインを合わせるようにすると取り外しできるんですが、付ける時にはちょっと捻りながらやると取り付けやすい感じでした。
レンズがハマると白ラインと切り欠きが合った状態なので、レンズユニットを時計回りに捻ってやれば固定されて電子接点が連動する状態になります。
気になる点があるとすると、ユニット周囲の部分(電子接点と写真のマグネットフィルター用ベースリングとの間の部分)も樹脂製なので、レンズユニットの着脱時に爪でスレが出るだろうなぁという事くらいでしょうか。
Remaster Slimの外観
レンズユニットが何であれ本体ユニットは同じものを使うだけなので、見た目は固定。

長さは19.5mmしかないのでパンケーキレンズにはなるんですが、正直見た目がダサい(;´Д`)
意外とレンズキャップはシュッとしていてRemaster Slimの文字も悪くないのに、側面(カメラ上面側)の筆記体フォントが微妙なんですよね。
カメラにつけるとこんな感じでめっちゃ浮いてます。

真剣にここのRemaster Slimの筆記体文字は必要なかったと思います。
普通だったら焦点距離あたりが入ってそうな位置だけど、焦点距離が単焦点の可変式なので品名を入れたというのは容易に想像できるんですけどね・・・
せめてSAMYANGのロゴだったらまだ良かったのになぁ(´・ω・`)

という事で、黒テープで筆記体を隠してみました。
因みにお分かりかと思いますが、現在何のレンズを付けているかはレンズユニット正面のRS 21 / 3.5などのプリントされた文字を見るしかありません。
フィルターを使うためにマグネットフィルターアダプターを買ってみた
SAMYANG Remaster Slimは上で書いたように49mmのレンズフィルターが装着可能となっています。
ただ、レンズユニットを交換する時にはこのレンズフィルターもいちいち取り外さないといけないので地味に手間になると思います。
という事で、Amazonブラックフライデーで値下がりしていたKenkoのマグネティック・マウントシステム用のベースリングとコンバージョンリングを買ってみました。

これがレンズ側につけるベースリング。
そしてフィルターの裏側につけるコンバージョンリング。

ということで、ベースリングをレンズ本体側に装着しました。

そしてコンバージョンリングをレンズフィルターの下側に取り付けます。

これでベースリングとコンバージョンリングがマグネット吸着するようになり、いちいちネジを緩めまくってフィルターを取り外さなくても簡単にレンズから取り外す事が出来ます。
注意点は厚みが増す事
一見すると便利そうなマグネットマウントシステムですが、地味に重要な注意点があったりします。
上の写真のようにベースリングで数ミリ前に、コンバージョンリングで数ミリ後ろに伸びる形になるので、状況によってはフィルター2枚重ねと同じ状態になるので、広角レンズなんかだとケラレが発生する可能性が出てきます。
可変NDフィルターなんかの厚みがあるフィルターだと下手をすると24mm時点でケラレるかと・・・
とりあえずRemaster Slimにこの組み合わせで装着しましたが、最広角の21mm F3.5を装着した状態でもケラレは発生しなかったので、レンズ保護もレンズユニットの交換も容易に出来るようになって良かったです。
因みに磁力の強度ですが、めっちゃ強いというわけではないけど簡単にポロッといく感じでもないかなぁという感じ。
少なくともX half用のマグネットフィルターよりは安心して使える来の強度はあります。
SONY α7CRへの装着
別にα1 IIに付けてもいいんだけど、折角コンパクトに使うんだったらという事でα7CRに付けてみました。

小せぇ・・・そして筆記体の浮いた感じが半端ねぇ・・・
フィルターをつけた状態でもこのサイズなので、焦点距離と写りが好みなのであれば、常用レンズで付けっぱなしでも全然いいかもしれない・・・

焦点距離で考えたら28mm F3.5ですかね・・・
VILTROX AF 28mm F4.5でもいいんじゃないかという気もするんですが、何気にあのレンズはレンズキャップを閉じる時にレンズを上に向けておかないとちゃんとキャップが閉まらないという作法があるので、Remaster Slimの方が気楽に使えそうかなという気がします。
とりあえずどんな感じなのかのテスト撮影
とりあえずそれぞれのレンズユニットを交換しながらAFの最短撮影距離あたりでRGウイングガンダムゼロを被写体に撮ってみました。
設定は絞り優先で全てF3.5、クリエイティブルック:スタンダードで撮って出しのJPEGをリサイズしただけのものになります。



そもそも6000万画素の解像度を活かし切れるような感じのレンズではなさそうなんですが、思っていたよりはしっかり写っていて意外とちゃんと使える感じがしますね。
まぁちゃんと使えるとはいっても、コンパクトフィルムカメラのレンズのイメージからするとって感じなので、写りに今風の解像度を求めると期待はずれな感じがするとは思います。
実写
とりあえずトリミングなんかはナシの全て撮って出しをリサイズだけしたものになります。

スタンダードで撮ってますが、そもそも自転車の色が褪せまくっててちょっとレトロっぽい感じになってます。
コンパクトフィルムカメラを基礎としてるのでもっと緩い感じかと思いましたが、予想に反して結構いい感じに写りますね。

21mmにユニットを交換して建築中の倉庫らしきフレームを撮ってみました。

周辺減光もあって、四隅に行くほど甘くなっていく描写ですが、決してダメだこりゃって感じではないです。
寧ろ19mm程度の厚みでこれだけ撮れれば十分じゃね?って気がします。
AFは少しゆっくり目ですが、スナップ用途だったらじゅうぶんかなぁという感じ。

広角なので歩きながら自分の影を撮っても全然ブレとかは気にならない感じです。
スイッチをAFからMFに変えて、操作感がどうなのかを試してみました。

薄いレンズなので触る時点でほぼレンズ先端になるんですが、ピントリングが先端部分に配置されているので操作感は全く問題なし。
カメラ本体の下に左手を添えて、人差し指で操作できるのでMFにしてもかなり軽快に操作できました。
レンズごとに元となったフィルムカメラのレンズが違うので傾向は違うと思うんですが、順光でクリエイティブルックをスタンダードにしていると、そこまでレトロな感じがしないかなぁという感じですね。

青空とかを写すと周辺減光がかなり目立つ感じになってきますが、周辺減光は気にしないとか、結構美味しいと思うような人には美味しいレンズなんじゃないかなぁという気がします。


28mmを撮ってなかったけど、意外と28mmと32mmだと差が無いのでまぁええかなと(;´Д`)
とりあえずレンズユニットの交換自体はマグネットフィルターによって楽にはなってるけど、レンズユニットをケースから出してレンズ本体から引っこ抜いてというのは意外と手間は手間かなという感じ。
自分なりの使い方というかスタイル的なものが確立すれば問題ないんでしょうけどね。
逆光で少し日差しが入る感じでの撮影。
この辺りからクリエイティブルックをFLにしていたはず・・・

21mmは光源付近に若干フレアが出ますが、そんなに気にならないかも。


一方、28mmと32mmの方はゴーストが発生しています。
どれくらいの光でどんな感じにゴーストやフレアが出るのか分かりませんが、重さ、サイズ、写りのどれを取っても普段使いするのにはかなりいい感じのレンズなんじゃないかなぁという気がします。

スナップ用途に向いている28mmもVILTROXのAF 28mm F4.5よりも明るさ、最短撮影距離、MAが使える点、MFだと更に最短撮影距離が短くなるという点で結構メリットがデカいなと思いました。

回送車が来たのでそのままパシャリ。
画素数を活かしきれないレンズ性能ではあるものの、フルサイズの高画素機とは思えないレベルの軽快さがあります。
クリエイティブルックとかをカスタマイズしてシャープネスを上げたら意外と今風になるのか?
ちょっと寒さが増してきているのもあって冬用のジャケットを着ることが多いんですが、グリップより少しだけレンズが前に出る程度のコンパクトさなので、ジャケットのポケットにすっぽりと入るくらいのサイズ感になります。

気になるものがあったらサッと取り出して電源を入れてパッと撮るというコンデジ感覚で使えますね。
花なんかはAFだと最短撮影距離が30cmなのでこんな感じになります。

MFにすると23cmまで寄れるけど、やっぱり広角なのでちょっと向かないかなぁ・・・
ボケはめっちゃガチャ付くような感じという事もなく、気持ち悪い感じでもないので普通かなぁ。

周辺が気になるって事ならいっそAPS-CクロップをONにして31.5mm、42mm、48mmのレンズとして使うのもアリかもしれませんね。
まとめ
実際に購入するまでは写り的にどうなのかなぁという若干の不安感はあったんですが、実際に使ってみると予想以上に普通に使えるレンズで、結構自分好みの写りだったので大満足です。
とはいえ、流石に本来の金額で購入となるとちょっと高いかなぁという気はするし、その金額だったらもう少し足して純正のFE 40mm F2.5辺りを買う方が間違いないと思うので、今回のセール価格で購入できたのは良かったと思います。
個人的に使って面白いと思ったのは、無駄に広くなるけど21mm F3.5で寄って引いての広角スナップ、クロップしてテーブルフォト的なものに使うのもいいのかもしれないなぁと思いました。
正直、誰にでもおススメできるレンズというものではないと思いますが、オールドレンズも気になるけどAFがいいんよって人や、周辺減光とか硬すぎない写りが好きな方だったら意外とハマりそうなレンズなので、そういった方はこの機会に買うのもアリかもしれませんね。
いっそ40mm~50mmあたりで寄れるレンズユニットだけのバリエーションとかを販売してくれないかなぁ・・・
テスト撮影
